Shigeko HIRAKAWA
- 光合成の木  Tokyo  2009

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東 京 2009年3月



国立新美術館企 画 《アーティスト・ファイ ル2009》
光合成の木 Tokyo 2009


2009年、3月4日−5月6日



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ー  正面玄関 −

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上の写真・晴天の日
下の写真・曇りの日の夕方
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《光合成の木  Tokyo 2009

2003年初夏、「都市と森林」というテーマを与えられて仕事を始めようとしていたとき、私は人間が形作る都市よ りは、都市からはるかに遠ざかり、あまり にわれわれの知らない存在となってしまった「「森林」のほうへ強く興味を引かれる自分に気がついた。

「都市」側に立つか、「森林」の側に立つかという問題は、こ のとき、地球の裏か表ほどのおおきな選択であるように思えたのだ。

ずいぶん昔からフランスでは、突然の土砂降りで水が出るなどの異常気象に驚かされてきた。大嵐の中で野外作 品を作るたびに、また予測もできない大風で樹齢百年以上の大木が真っ二つに折れるなどするたびに、こうした荒々しい自然に対峙して劣らない作品は何か、と 考え続けてきたが、その果てで、物理的に破壊されても作品に埋め込んだ人間の思想や思考は残りうる、という結論にたどりついた。

そう確信した上ではじめて、「都市と森林」のテーマを契機にして、都市(つまり人間)ではなく、森林(自然)の側へ立つことで、自然を中心においた人 間の思想や行動を浮き彫りにしようと考え始めたのである。

木々の緑(葉緑素)には大 事な役割があり、太陽光線に 当たると光子エネルギーが葉緑素を働かし、二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出す。 そのあいだに葉緑素は自分の養分であるグルコースを作り出す。 陸上では植物が、また海はプランクトンや海草が、光合成をし、地球の酸素が生成されて いる。
光合成をする葉緑素の欠如を訴える植物の脱色は、地球の空気の危機を示す信号でもある。 
科学者にもいまだに再現できない自然の最大のシステムといわれるこの「光合成」は、色という大きな素材がアートへの転換の大きな契機に結びついた。

作品「光合成の木」は、本物の光合成のように、太陽光線に当たると即座に色を着ける特殊なピグメントを含んだプラスチックの葉を枝枝に取り付けたものであ る。紫色になった「光合成の木」は、今光合成の最中であるというしるしであり、太陽の沈む夜、色は消えて白く変貌したプラスチックの葉は、葉緑素を失って 脱色してしまったゴースト・ツリーという様相を呈する。 地球の自転と天候によってその環境の瞬間を機能する光合成の木は、生き物に際限なく近づこうとす るかのようである。





関連ページ 《空気が危な い?》プロジェクトを読む



国立新美術館

光合成の木 Tokyo 2009

ケヤキ3本、直径22cmのプラスチック円盤4000-5000枚
フォトクロミック・ピグメント
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ー テラス −


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上の4枚・2月下旬から3月上旬の設置作業 中のようす
下の写真・展覧会開始直後
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「光 合成の木 Tokyo 2009、ドキュメンタリービデオ」、12分 
平川滋子構成監督、国立新美術館制作

(Tokyo, Japan)

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イン フォメーション:
国立新美術館 企画、アーティスト・ファイル2009展
企画責任 福永治
カタログ 《アーティスト・ファイル2009》 9冊 (国立新美術館出版)
『光合成の木 Tokyo 2009』 平川滋子 NO.10

カタログ、アーティスト・ファイル2009 ドキュメント
アーティスト9人
国立新美術館出版